家庭菜園初心者・簡単野菜作り

施肥と肥料作り

野菜にやさしい肥料を使えば食べる時にも安心です。

「有機質肥料」と「化成肥料」

自然にある植物や動物からつくられた肥料を「有機質肥料」といい、化学物質を合成した肥料を「化成肥料」「無機質肥料」といいます。例外もありますが、有機質肥料はじっくり長く効きめが続く「遅効性」「緩効性」で、化成肥料はすぐに効果があらわれる「速効性」があり、その肥効も強くなっています。有機質肥料はなかなか効果があらわれませんが、量が多すぎて逆に野菜を傷めてしまう「肥焼け」は、あまり起こりません。化成肥料は足りない養分を選んで施すことができるので、みるみる状態がよくなりますが、施しすぎて野菜がとろけるように腐ったり、効果が強すぎて成長サイクルが変わり、いつまでも収穫できないこともあります。見た目だけ大きくなり、軟弱な株に育ちやすいのも化成肥料で、正しい施肥が重要です。

肥料の3大要素について

肥料の成分
野菜づくり、植物の成長に必要な養分は16種類あり、そのうち最も必要量が多く、重要な窒素(N)、リン酸(P、リン)、カリ(K、カリウム)を肥料の「3大要素」といいます。これに続くのがカルシウムとマグネシウムで、合わせて「5要素」といいます。これに、空気と水から得られる水素、酸素、炭素が、過不足なく吸収されるようにすることが必要です。土中に含まれるイオウ、鉄、マンガン、鋼、モリブデン、ほう素、亜鉛、塩素の微量要素は、堆肥を施していれば、まず不足する心配はありません。水はけ、水もちがよく、通気性のある土なら、苦土石灰をまいて中和させておけば、カルシウムとマグネシウムも補え、土中の微量要素も吸収されます。あとは、大量に消費される3大要素を肥料で補います。

窒素について

「葉肥え」。茎葉の成長を促すため、3大要素の中でも特に大量に必要とされます。葉茎薬類の収穫を大きく左右する要素です。不足すると成長が遅れ、多すぎるとひょろひょろと伸びたり、葉の元気がよすぎていつまでも果菜類の実がつかない、豆類の豆が充実しない、根菜類の根が太らないといった状態になります。窒素は水にとけてしまいやすいので、追肥でも補うようにします。

リン酸について

「実肥え」。生育初期に多く必要な養分で、不足すると根の成長が悪くなり、花つき、実つきが悪化します。特に果菜類、イチゴ、スイカなどの収穫に影響します。また、秋まきで年を越して収穫するような場合、タマネギなど冬越しの体力をつけさせるため、根を十分張らせるように施すこともあります。雨で流れることがないので、元肥に全量を施します。

カリについて

「根肥え」。根の発育を促すことで耐寒性、耐暑性、耐病性を高める養分で、根菜類に欠かせない要素です。葉茎菜や根菜で不足すると、味が落ちます。水にとけやすいので、長く栽培を続けるときは追肥します。

有機賞肥料は元肥として使用

有機質肥料は多少なりとも、3大要素と微量要素を含みますが、特に必要とする養分を多く含む肥料を選んで施します。窒素分を多く含むのは油かすです。植物の油分をとった残り分です。魚かすにも含まれます。リン酸には骨粉や鶏ふん、米ぬかで、あまり土の中に広がらないので、あらかじめ根の伸びる付近に施しておきます。カリは草木灰ぐらいしかなく、有機質肥料で十分量を施すのが困難な要素です。硫酸カリなどで補います。堆肥に代表されるように、有機質肥料は単に肥料分を補うだけでなく、土壌改良にも役立つので、主に元肥として施します。有様質肥料は化成肥料にくらべると成分量が少ないため、有機質を含む化成肥料「有機化成」も出回っています。これは、原材料の20%以上が有機物という化成肥料です。

化成肥料は不足分補いたいときに使用

化成肥料は肥料の3大要素がバランスよく配合されており、手軽に使うことができます。早く収穫したいからと、規定量以上に使うのは逆効果です。必ず説明書を読んで適切な量を施します。よく使われるのは三要素の成分量の合計が30%以下の普通化成肥料です。不足する養分の比率を高めた肥料もあるので、足りない要素をすぐに補いたいときに便利です。においがなく、虫を寄せつける心配がないというメリットもあります。しかし、化成肥料に頼ると過不足による生育のアンバランスを引き起こしやすくなるのも事実です。また、土が急速に酸性化してしまう問題もあります。安心して使える有機質肥料を主体にし、緊急の事態や大量に肥料分を必要とするときに、化成肥料で不足分を補うのがよいでしょう。

「堆肥」は植物が腐熟した有機質肥料です。稲わらや収穫後の野菜、落ち葉などを腐らせたものですが、完全に熟したものは元の形をとどめず、においもほとんどありません。このような「完熟堆肥」がよい肥料で、未熟な堆肥の使用は、病害虫発生のもととなります。入手、使用時は必ず完熟したものを選びます。堆肥は養分が少しずつじわじわと浸透します。また、土にまぜることで土を団粒構造にします。さらに、余分な肥料成分をいったん蓄え、肥料濃度を緩和させる役割まで持ちます。

毎日の食事で出てくる生ゴミと土があれば、堆肥は自分で作ることができます。堆肥をつくるスペースがない場合は、「コンポスト装置(容器)」を入手することで、ベランダなど
で作ることもできます。ゴミ削減の一環として、自治体で装置購入の補助をしているところもあります。ぜひ、地元の役所の案内などを確認してください。

水はけのよい場所に穴を掘り、食べた野菜の破棄分、刈りとった草、稲わら、落ち葉、木片などを入れ、腐熟を促進させるために米ぬかや抽かす、鶏ふんなどをまぜて埋め戻し
ます。水を入れてからビニールをかけ、雨がかからないようにすると同時に、においが広がるのを抑えます。ときどき掘り返して土の上下を入れかえます。堆肥は、手でつかむとくずれるような状態にしてから使用します。穴を掘って作る場合は3カ月、コンポスト装置を使うと1カ月程度でできます。

作り方の手順

①木枠の中に材料となる生ゴミ、刈り草、稲わら、落ち葉などを入れる。つかむとしみ出る程度に水をかけてよく踏みつけます。
②その上に発酵剤(好気性)や米ぬか、油かす、鶏ふんなどをまきます。これを何層にも積み上げてビニールシートなどの雨よけをします。
③10~20日ほどして発酵の熟が引いたところで、いったん切りくずして空気を入れるようにかくはんします。作業後は雨よけをかけておきます。
④切りくずLを2~3回繰り返し、つかむとぽろぽろとくずれるような状態になったらでき上がり。高温なら2-3カ月、低温だと8~10カ月かかります。

地中埋設型容器作り方

①ポリバケツなどの容器全体に穴をあけ、底を切り落とす。埋設型の市販品を入手
してもよいでしょう。
②穴を掘って①を埋め、堆肥の材料を入れます。においがひどいときは土や発酵剤(嫌気性)を入れます。
③生ゴミが出るたびに、穴に入れていきます。いっぱいになったら土を山盛りにして熟成させます。
④3カ月以上たって悪臭がなくなったら使う。できたところで容器を引き抜き、ほかの場所に移します。

堆肥は微生物が有機物を分解してできるので、微生物の活動を助けることが堆肥作りのポイントになります。第一は水と空気がバランスよく含まれる環境作りです。握ると水分がしみ出る程度を目安に水を入れます。第二は、窒素分と炭素のバランスです。窒素分を含む米ぬかなどをまぜるのはこのためです。分解を促進する酵素剤をまぜるのもよいでしょう。第三は、材料はこまかくしてから入れることです。大きければそれだけ分解に時間がかかるので、生ゴミなどは小さく、貝殻や卵の殻などは砕いて入れます。