果樹栽培・ガーデニングの基本

果樹の人工授粉

実がなるためには、受粉・受精が行われなければなりません。確実に実をならせるには人工授粉をします。

実がなるためには

果実が実ってそれを賞味することは、果樹栽培のなかで最も大きな楽しみです。しかし、果樹のなかには、1本の木では実がつかないものもあります。たとえば、雌雄異株の場合は、雄株と雌株の両方の木を植えないと受粉できません。ウメやモモには花粉のない品種もあり、自然状態では実がなりません。また、同二品種の花粉ではなく、他品種の花粉を必要とするものもあります。多くの果樹は、自分の花粉や同二品種の花粉では実がつきにくく、他品種の花粉でも特定の品種間では受粉しない場合もあります。ウンシュウミカンやイチジク、ブドウなどのように受精しなくても実がつくものもありますが、一般に受粉は風や昆虫によって花粉が運ばれて、雌しべの先に雄しべの花粉がついて行われます。昆虫を媒介とするものがいちばん手間がかかりにくく簡単ですが、そのためには昆虫が活動しやすいように、一年中花を絶やさないような環境づくりが大切です。

人工授粉

花粉採取法写真
市街地や交通量の多い地域では、昆虫が少ないため、実つきがよくありません。低温や強風のため昆虫が集まらないこともあります。確実によい実をならせるためには、人工授粉をします。また受粉しにくい品種も人工授粉の必要があります。鉢植えの場合は、花の数が少ないため必ず人工授粉をしましょう。人工授粉は、雌しべが5分咲きのときと満開のときの2回行うと確実です。受粉適期の花は、雌しべの先が液で光っているので、確認したうえで行います。開花直後から3日以内の、天気がよい暖かい日を選んで行います。人工授粉には、花授粉と花粉採取法があります。花授粉は、開花直後のよく花やく粉のついた花を採取して、葯を受粉する花の柱頭に直接つける方法です。花粉採取法は、開花直前のつぼみか開花直後の花を採取して花弁を除き、前を採取して花粉が出てくるのを待ち、それを綿棒などで花の柱頭につける方法です。果樹の種類や品種によって受粉させる花の選び方は異なりますが、咲いている花すべてに花粉をつけてしまうと、実がなりすぎてしまうので、大きな花だけを選んで受粉させるようにしましょう。また、受粉品種より花粉品種が早く咲く場合は、花粉の出た葯をセロハン紙に包み、びんに入れて密封して冷蔵庫で保存します。花粉品種が遅く咲く場合は、枝を切って花びんにさしておき、日当たりのよい室内に置くなどして早く花を咲かせて、その花粉を使います。

摘蕾

花がたくさん咲いて必要以上の実がなると、樹勢が消耗して栄養分が行き渡らない実ができてしまいます。そこでつぼみや花の段階でこれらを間引いて、果実がなりすぎるのを防ぐのが摘蕾です。摘蕾を行っておけば、実は大きくなり色や味もよくなります。摘蕾をしないと収穫前に小さい実は自然に落ちてしまったり、果実が多すぎて、隔年にしか実がつかなくなったりします。摘蕾を行う時期は、開花後、結実後、生理落下が終わる6月下旬の3回に分けて行います。摘みとる花やつぼみは、枝の基部や先についたもの、側蕾です。