果樹栽培・ガーデニングの基本

リンゴの育て方・栽培方法

バラ科

寒さに強く世界中で広く栽培され、現在では数千種類の品種が作られています。果実の形、色、肉質、熟期なども品種によって異なり、食べ方もいろいろ工夫できます。


リンゴ・写真1
リンゴ・写真2
リンゴ・写真3

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栽培上のポイント

●冷涼で、夏に雨の少ない気候を好む。肥料と水を好み、水はけのよい土が適する。
栽培上の適地

●北海道中部以南~鹿児島県以北。
栽培上の難易度

●雨や過湿にやや弱く、加えて用土の乾燥にも弱い。夏の高温下では遮光が必要。

リンゴの果樹としての特徴

本来、落葉高木性の樹木で、高さ7mほどになります。果実は古くから食用とされて、すでに4000年以上前のヨーロッパで栽培されていたといわれ、多くの神話や伝説のなかでも取りあげられています。現在では数千種類の品種が作られ、果実の形や色、肉質や収穫期などはさまざまです。リンゴは日当たりを好みます。過湿や雨に弱いのですが、加えて、用土の乾燥にはさらに弱く、夏の高湿乾燥期の水不足は厳禁です。

リンゴの栽培条件と品種選び

寒さに強い果樹で、年間平均気温が7~14℃くらいを好みますが、暖地でも栽培できます。しかし、冬期に7℃以下の低温に長期間あてておかないと、春にうまく発芽しない、あるいは花が開かない場合もあリるので、一年中温暖な場所には不向きですl また、開花時に強い風に当たると障害を受けやすく、風の強い地域や、鉢植えでベランダなどに置く場合は防風対策が必要です。自分の花粉では結実しにくいので、2種類以上の品種を混植し、受粉させる必要があります。重要なのは開花期をあわせることと、品種同士の相性です。スペースがなく、混植できない場合は、開花期が重なるものを高接ぎするとよいでしょう。「つがる」「紅玉」「ゴールデンデリシャス」「王林」「ふじ」などが栽培しやすい品種の代表です。暖地では果実が扁平になりやすいので、そうなりにくい「ふじ」や「王林」などの晩生種を選ぶとよいでしょう。

リンゴの栽培方法

11月下旬~12月上旬と、発芽前の3月中旬が植えつけの適期です。鉢植えでは3月上旬~中旬に植えつけます。7mほどの高木になるため、コンパクトに栽培したい場合やコンテナ栽培にする場合は、わい性の台木苗を購入しましょう。立木仕立てで大きな樹形にするためには、マルハカイドゥを台木とした苗がよいでしょう。リンゴは夏の乾燥に弱い果樹で、とくにわい性の台木苗は細根が多く、少し乾燥しただけでも根が弱ってしまいます。植えつけの際には根を乾かさないように注意をし、植えつけあとは敷きわらなどをして、根の乾燥を防ぎます。

わい怪台木のもの以外は7mほどまで育つため、庭の隅の日当たりのよい場所に植えつけましょう。わい性のものであれば、植えつけ場所は2m四方ほどの広さがあれば十分です。大型の樹形にする場合は、苗の周囲5m四方ほどの広さが必要です。水もちと水はけのよい土を好むので、植えつけ場所は、腐葉土を混ぜて土壌改良をしておきます。

立木仕立てなどのほか、わい性の台木苗を使えば、トレリス仕立てもできます。さらに、厚手のビニールや、根を通さず腐らない不織布の袋、コンクリートブロックなどで、根が広がるのを制限して育てれば、さらにコンパクトに栽培できます。また、あまり剪定することなく、コンパクトな立木に仕立てることもできます。

リンゴの剪定には、夏期の剪定と冬期の剪定があります。

夏の剪定は日当たりと風通しを考える

春以降、樹勢が強いと、枝先などから直立して徒長枝が伸びます。6~7月ごろ、これらの先端、あるいは中間部で切り戻します。また、混み入った部分は枝を基部から取り除き、株の内部の日当たりや風通しをよくするようにします。切ったあとふたたび出てくる芽は早めに再度摘み取ります。

冬の剪定で樹形を整える

冬の剪定は、おもに樹形を整え、果実のつきをよくするために、余分な枝を切ることが目的です。ふつう植えつけから3年目までは冬の剪定を行いません.4年目以降に、主幹や側枝の先端部分を更新する剪定を行います。古くなった枝や重なり合った枝を取り除き、樹勢を調整します。

仕立方とそれぞれの剪定

自然樹形仕立ての場合は、夏期の剪定は必要なく、冬期に混み合った桟を間引き、徒長した主枝や要主枝を切り返して更新し、樹形を保つようにします。無剪定立木仕立てでは、残した枝の樹勢が強くなり樹形が乱れるため、冬に強い剪定を行うことは避けます。夏には混み合って風通しや日当たりが悪くなった部分の勢いの強い枝を間引きます。トレリス仕立てでは、4年目以降、6月の中旬から下旬に、側枝の上位に徒長ぎみに伸びる枝を、数cmの位置で切り戻します。こうすると花芽がつき、翌年の短果枝が増えます。こうして夏に強く勢いのある新梢を剪定して間引いたり、切り返すことで、樹勢が まり、樹形を乱さず育てることができます。また、冬には主幹や側枝の先端部を更新する剪定が必要になります。

肥料は幼木期はほとんど必要ありません。収穫できるようになったら、収穫後の12月末に、㎡あたり100~150gの化成肥料を施します。

自分の花粉では受粉しにくい(自家不和合性が強い)ので、確実に受粉させるためには他の品種の花粉を人工授粉させます。

花芽からは4~6個の花が咲きますが、1花房に1花になるように、いちばん早く開花する中央の花を残して、ほかを摘蕾します。摘蕾によって1花房に1花としなかったものについては、満開後5週間以内に、最終摘果するのが効果的です。このとき、ふつう最も肥大する中心果を残して摘果します。さらに、リンゴは果実が大きくなるので、実をつけさせる短果枝の間隔も大きくしなくてはいけません。ふつう、大玉の品種で4~5短果枝に1果、中玉の品種では3短呆枝に1果程度になるように摘果します。摘果は、残す実に傷をつけないように注意しながら、ハサミで果柄を切ります。

果実を観賞するだけでしたらとくに袋かけは必要ありません。さび病や吸汁害虫などによる被害の防止、色をよくするためには袋かけを行います。病虫害の被害を防ぐということは、薬剤散布を極力減らすことにもつながります。吸汁害虫による被害を防ぐことを考えると、袋かけは6月中旬までには行いましょう。袋を取り除くのは、収穫の1か月ほど前、日やけを防ぐために曇天の日か午後に行います。

着色のよい果実から順次収穫しますが、一度に収穫せず、はじめに樹冠外部の日当たりのよい場所のものを収穫し、少し日にちをおいてから、樹冠内部のものを収穫するとよいでしょう。

その他

リンゴは、1つの芽のなかに、花になるものと枝葉になるものの2つの組織が入っています。前年に伸びた枝についた腋芽が伸びて、その先端が花芽になります。7月までにわずかに伸びた短果枝の先端に翌年の花芽がつき、それが実を結びます。つまり、果実は芽が伸びてから3年目の枝につきます。リンゴの栽培では、果実を結ぶ芽をつける短果枝を多くすることがポイントです。

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