果樹栽培・ガーデニングの基本

ミカン類の育て方・栽培方法

ミカン科

ミカン類にはウンシュウミカン、キシュウミカン、タチバナ、ポンカン、コウジ、クネンボ等があります。


ミカン・写真1
ミカンの花・写真2
ミカンの実・写真3

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栽培上のポイント

●カンキツ類のなかでは耐寒性は比較的 あるものの、冬の寒風を避ける工夫が必要。
栽培上の適地

●房総半島以西の太平洋岸の暖地(ウン シュウミカン)。
栽培上の難易度

●丈夫で比較的育てやすい。

ミカン類の果樹としての特徴

ミカンとよばれるものは、ウンシュウ(温州)ミカン、キシュウ(紀州)ミカン、コウジ(相子)、ポンカン(椪柑)、クネンボ(九年母)、タチバナ(橘)、クレメンティンなどの総称で、多くはウンシュウミカンをさします。

ウンシュウミカン

温暖な日本の気候に適したカンキッ類で、日本を代表する栄樹です。カンキツ類のなかでは比較的寒さにも強いほうで、関東地方より北でも、太平洋岸の温暖な地域では栽培することが可能です。

キシュウミカン

果実は70g前後とウンシュウミカンより小ぶりですが、酸味が少なくて甘く、果汁が多く、さわやかな香りが特徴です。丈夫で育てやすいミカンの仲間で、鉢植えにも適します。

タチバナ

日本に野生するカンキッ類の一種です。3m前後の低木怪で、耐寒性に優れ、観賞用として鉢植えなどに利用されます。生食には適しません。

ポンカン

果実はウンシュウミカンより大きく、150g前後になります。皮と実の間にすきまがあってむきやすく、酸味は少なく独特の風味が特徴です。ウンシュウミカンより耐寒性が劣り、温暖な地方でなくてはよい果実が実りません。

コウジ

タチバナの変種とされ、日本特産のカンキツ類です。果実は40gほどと小さく、果肉は淡い黄色で酸味が強いのが特徴です。耐寒性が強く、山陰、北陸、東北地方でも栽培され、家庭用果樹として利用されるほか、鉢物として観賞用に利用されます。

クネンボ

ウンシュウミカンの近縁で、マレー半島からインドシナが原産。日本へは江戸時代以前に渡来したといわれています。果実は180gほどと大きいのですが、ウンシュウミカンに比べて酸味が強く、果実としての品質は劣ります。

ミカン類の栽培条件と品種選び

ここでは、ミカン類の代表として、ウンシュウミカンを中心に取りあげます。ウンシュウミカンはほかのカンキツ類に比べて耐寒性があり、丈夫で育てやすく、日当たりがよくて、水はけのよい土壌であればとくに土質は選びません。大きく早生種と普通種に分けられますが、最近では、9月には収穫できる極早生種も出回っています。早生種は寒さが厳しくなる前に収穫できるため、比較的冷涼な地域でも栽培が可能です。代表的な品種には「宮川早生」「興津早生」などがあります。普通種は早生種に比べると温暖な地域に向き、風味も味もよい品種が多くあります。しかし、収穫が12月になる品種では、寒さで収穫後の樹勢の回復が十分行われず、1年おきに実のつきが悪くなる隔年結果になりやすいのが欠点です。代表的なものは「大津4号」「青島ウンシュウ」などです。家庭栽培には、比較的栽培が容易な早生種が適しています。

ミカン類(ウンシュウミカン)の栽培方法

苗木は2月下旬から園芸店の店頭に並びますが、植えつけは、3月下旬~4月上旬に行います。カンキツ類は、1年の間に3回新しい枝を出します。4~5月に春枝が伸び、その春枝から伸び出して8月いっぱいまで伸びるのが夏枝。さらに夏枝の先端から秋根が出て10月まで伸びます。植えつけは、春枝の生長が止まる6月にも行うことができます。

植えつけは、日当たりがよく、寒風の当らない場所に

庭の南側や西側の日当たりがよく、冬に寒風があたらない場所を選んで植えつけます。排水性がよく、ある程度耕土が深い土壌を好みます。粘質な土は適しません。

主枝を3本にした 「開心自然形仕立て」が一般的です。

落葉果樹よりも軽い剪定を

剪定は、樹形を美しく維持し、毎年おいしい実をならせるために行う作業です。植えつけ後2年目の3月に最初の剪定を行います。成木の前刀定の原則は、落葉果樹に比べて剪定の程度を軽くすることです。また、隔年結果する場合は、前年が表年(実のたくさんなる年)のときには軽めの剪定とし、裏年(実があまりならな
い年)にはやや強い剪定を行うようにします。

肥料は春・夏・秋の3回に分けて行う

肥料は、春枝が伸び出す前の3月、結実後の6月、収穫直前の11月の3回、1年間に施す量を3等分、あるいは春3、夏4、秋3の割合で施します。成木では樹の下全面に施して土にすき混みますが、幼木の場合は、樹を中心に半径50cmほどの輪状に施してすき込みます。

植えつけ2年目から花が咲きますが、株の生長を促すためにすべて摘蕾します。3年目に開花結実した場合、1樹につき数個の果実だけを残して摘果します。成木になってからは、生理落果が終了し、果実が親指大になった7月上旬、葉30枚に1果程度となるように摘果します。摘果するものは、傷がついていたり形が悪いもの、病気や害虫の被害にあったもの、また、枝から上向きになっているものを中心に行います。

やや青みが残っても収穫できる

果皮が緑色からミカン色に変化し色づいた時期を目安に収穫します。早生種の場合は、果皮よりも果肉の成熟が早く、やや青みのあるものでも実は十分に熟しています。収穫のさいには、収穫バサミで果柄をへタから2~3cmの長さで切り、手元でさらにハサミをへタにあてるようにして、果柄を切り取ります。果柄が長いままだと、箱や袋にミカンを入れたときに、ほかの果実を傷つけてしまうので注意しましょう。

カンキッ類は、前年に伸びた新梢の先端部の葉腋に、混合芽(花芽と葉芽が一緒になったもの)をつけ、前年に実をつけた枝(結果枝)につく芽には花芽が含まれず、果実のつかない発育枝とよばれる枝だけが伸びます。この発育枝は翌年の結果母枝となります。すなわち、花芽が多くついて実のたくさんなる年(表年)の翌年は、花芽のついた枝が少なくなって裏年(結実の少ない年)となり、その翌年には花芽をもった枝が多くなってまた表年となります。このような性質のため、カンキツ類はほかの果樹に比べて隔年結果しやすくなります。

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